ブログ

日別アーカイブ: 2025年11月12日

中村瓦のよもやま話~part26~

皆さんこんにちは!
株式会社中村瓦の更新担当の中西です!

 

さて今日は

中村瓦のよもやま話~part26~

~一枚一枚に宿る感覚と経験~

 

 

瓦を並べるだけなら、誰にでもできる。
だが、「納める」ことができるのは職人だけである。
瓦工事は、1mmの狂いが全体の美観と性能を左右する世界だ。


1. 瓦職人の基本姿勢

瓦職人に求められるのは、正確さと柔軟さ。
屋根という不安定な環境で、常に重力と風と戦いながら作業を行う。
その上で、設計図通りの勾配・割付・通りを守らなければならない。

また、現場は一つとして同じ条件がない。
屋根の形状、瓦の種類、下地の状態、気温や湿度。
それらすべてを現場で判断し、臨機応変に施工方法を調整する。


2. 主な使用道具

瓦職人の道具は、数こそ少ないが精度の塊である。

  • 瓦切断機(ディスクグラインダー)
     瓦の角度やサイズを合わせるために使用。切り口の直線性と角度が命。

  • 釘打機・ハンマー
     固定作業に使用。打ち込み深さで耐風性能が変わる。

  • 糸(通り糸)
     屋根のラインを整えるための基準線。全体の美観を決定する。

  • 水平器
     勾配確認用。小さなズレも最終的に大きな誤差になるため、頻繁に使用する。

これらの道具を使いこなすためには、数年の経験が必要だ。


3. 現場環境と安全

屋根の上は高温・強風・斜面。
足場を確保しながら、命綱を装着し、工具を安定させる。
安全管理は工事品質と同じくらい重要である。

また、11月頃は朝露や霜で滑りやすくなるため、作業時間を調整する。
現場監督と職人の連携が、安全かつ効率的な施工を支えている。


4. 棟の施工技術

棟瓦は屋根の“要”。
近年では、従来のモルタル固定に代わり、**乾式工法(強化芯棒+金具留め)**が主流となっている。
これにより、地震時の剥落リスクが減り、耐久性が向上した。

棟の仕上げは見た目以上に奥深い。
熨斗瓦の重ね方や勾配、棟芯の直線性——。
屋根全体の印象を決めるのはこの部分であり、熟練者の腕が最も問われる。


5. 職人の感覚

職人は、瓦のわずかな反りを指先で感じ取る。
「この瓦は少し逃げる」「この角は風を受ける」
経験から導き出されるその感覚が、図面以上の品質を生む。


6. まとめ

瓦職人の仕事は、単なる工事ではなく「手仕事の芸術」である。
一枚一枚の瓦に込められた経験と誇りが、建物の寿命を支えている。
そしてその技術は、次世代へと静かに受け継がれていく。