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中村瓦のよもやま話~part22~

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皆さんこんにちは!
株式会社中村瓦の更新担当の中西です!

 

さて今日は

中村瓦のよもやま話~part22~

~やりがい~

 

 

屋根は、住まいの最後の砦。風・雨・日射・積雪・塩害から暮らしを守り、街の景観をつくります。瓦屋の仕事は、伝統の継承であると同時に、最新の屋根外皮を設計・実装するエンジニアリングでもあります。ここでは現場のリアルから、いま求められるニーズと、この仕事ならではのやりがいを整理します。


1|いま顧客が求める「10のニーズ」

  1. 耐風・耐震の根拠
     ガイドライン準拠の全数緊結(釘/ビス)、端部強化、乾式棟の採用。地域風速・勾配に応じた仕様説明が必須。

  2. 雨漏り“ゼロ”の説明責任
     下葺材の等級・重ね幅・立上り・貫通部処理を図面と写真で可視化。一次止水(瓦・役物)と二次防水(下葺き)の連続性を示す。

  3. 小屋裏の暑さ対策
     通気棟・野地換気・遮熱下葺きの組み合わせ提案。瓦の空気層・蓄熱性を“夏を軽くする”方向で設計に反映。

  4. 長寿命・低メンテ
     釉薬瓦×SUS金物×高耐久ルーフィング。塩害・凍害エリアは材質統一と被覆仕様で劣化を抑える。

  5. 低勾配・シンプル外観への適合
     フラット系瓦・大判役物の納まり、雨仕舞ディテールの再検証。意匠を崩さず性能を確保。

  6. 太陽光・設備の取り合い
     貫通部止水ディテール(直葺き金具、フラッシング)と責任分界の明確化。将来の増設にも備える。

  7. 災害後の即応
     ドローン点検→写真台帳→見積→応急までのスピード。保険書類に耐える記録フォーマットが武器に。

  8. 改修・リフォーム前提
     葺き替え/葺き直し/部分補修。既存の歪み・下地劣化を調査→補修設計まで含めて提案。

  9. 景観・まちなみ配慮
     地域色・軒先ライン・鬼瓦・巴の意匠継承。新旧のハイブリッドで“らしさ”を残す。

  10. 見える化と保証
     施工写真(全景→中景→接写)、材料ロット、締結本数、下葺き重ね幅、換気有効断面の台帳化。保証条件と点検周期を明示。


2|現場で効くパッケージ提案(そのまま使える型)

  • 耐風・乾式棟パック
    端部増し締め+全数ビス緊結+乾式棟金具+通気棟。地域風速・勾配に応じた固定ピッチ表を添付。

  • 夏涼快パック
    野地換気スリット+通気棟+遮熱ルーフィング。小屋裏温度低減の概算シミュレーションと一緒に提案。

  • ドローン健診&台帳パック
    点検写真、劣化診断シート、優先度マップ、概算見積を当日提示。保険適用の可否を整理。

  • 太陽光安全パック
    直葺き対応金具/フラッシング詳細図/止水責任範囲の合意書。将来撤去時の復旧手順も明記。


3|チェックリスト(抜粋)

設計・見積

  • 勾配/地域風速/積雪/塩害区分を反映

  • 下葺材の等級・重ね・立上り・貫通部図

  • 換気量(棟・軒)と位置

施工

  • 全数緊結(材質/長さ/本数)

  • 役物の重ね方向・水返し・シールは一次止水、二次防水と連続

  • 棟:乾式金具の固定ピッチ・端部処理・通気経路

引渡し

  • 施工写真台帳(全景→中景→接写)

  • 保証条件・点検周期(年1推奨)

  • 将来の部分補修・太陽光追加の可否


4|ショートケース

台風常襲地域・寄棟の改修

  • Before:湿式棟の崩れ、袖瓦の抜け。

  • After:乾式棟+全数ビス緊結+SUS金物統一、軒・袖の端部強化。

  • Outcome:翌シーズン被害ゼロ。小屋裏の熱こもりも通気棟で軽減。

酷暑地域・小屋裏温度の改善

  • Before:夏の冷房効かず。

  • After:野地換気スリット+通気棟+遮熱下葺き、瓦は再利用。

  • Outcome:体感改善、結露苦情ゼロ。延命と省エネを両立。


5|この仕事の“やりがい”——5つの瞬間

  1. 数字が安心に変わる
     緊結ピッチ、下葺き重ね、換気断面…設計値が**「飛ばない・漏らない・涼しい」**という暮らしの実感につながる。

  2. 10年後の景色をつくる
     色褪せず静かに働く屋根が、町並みの品格になる。自分の仕事が風景になる誇り。

  3. 伝統×先端の橋渡し
     鬼瓦や本葺きの技と、乾式棟・SUS金物・ドローン診断が同じ現場で共存する面白さ。

  4. 一枚一枚の積み重ね
     勾配を振り返る瞬間の達成感。“今日の一枚”が家族を守るという実感。

  5. 施主の声が近い
     「台風でも安心でした」「夏が楽になった」――現場努力がすぐ言葉で返ってくる距離感。


6|90日アクション(事業所向け)

  • 標準仕様A4×2:下葺き/緊結/乾式棟/換気の基準値を整備し、見積に添付。

  • 写真台帳テンプレ:全景→中景→接写の撮影位置と必須ショット(下葺き重ね・棟金具・端部)を統一。

  • 通気・遮熱メニュー化:価格表と概算効果(小屋裏温度の目安)をセットで用意。

  • 太陽光ディテール集:貫通部止水と責任分界の合意書式を整備。

  • 台風期の動員計画:ドローン健診→応急→本復旧までの即応フローを全員で確認。


結び――“屋根は最後の砦”。だから、やりがいがある

瓦屋の価値は、性能(風・雨・熱)を設計し、意匠を守り、記録で証明し、長く使える屋根を残すところにあります。
ニーズは高度化していますが、やりがいもまた大きい。今日の一枚が、明日の安心と、十年後の美しさをつくるからです。
次の現場では、全数緊結/下葺きの連続性/通気の設計/台帳の可視化から。確かな“当たり前”を、静かに積み上げていきましょう。