ブログ

中村瓦のよもやま話~part25~

このエントリーをはてなブックマークに追加
Bookmark this on Livedoor Clip
Bookmark this on Yahoo Bookmark
LINEで送る

皆さんこんにちは!
株式会社中村瓦の更新担当の中西です!

 

さて今日は

中村瓦のよもやま話~part25~

~瓦屋根の意義と構造~

 

 

瓦屋根は、単なる屋根材ではない。
それは日本の気候と文化に適応してきた、数百年の知恵の結晶である。
夏の強い日差しを和らげ、冬の寒さを防ぎ、台風や地震にも耐えうる構造を備えている。
そして何より、瓦は「時間に強い」。百年を超えて家を守り続ける素材である。


1. 瓦屋根の基本構造

瓦屋根の工事は、単に瓦を並べる作業ではない。
まず、屋根の構造を理解しなければならない。

一般的な構造は次のようになる。

  1. 野地板(のじいた)
     屋根の骨格となる下地。構造用合板や杉板などが使われる。

  2. ルーフィング(防水シート)
     瓦の下で二次防水の役割を果たす。万一瓦下に浸入した雨を流す層である。

  3. 桟木(さんぎ)
     瓦を固定するための横木。瓦の位置と勾配を正確に保つ重要な要素。

  4. 瓦本体
     陶器瓦、いぶし瓦、平板瓦など用途に応じて選ばれる。

  5. 棟瓦・のし瓦
     屋根頂部を仕上げる部材であり、雨水の流れと風の受け方を整える。

この構造によって、屋根全体が「呼吸する」ように湿気を逃がしながら、雨水を外へと導いていく。


2. 瓦の種類と特徴

瓦は地域や建物によって種類が異なる。代表的なものを挙げる。

  • いぶし瓦
     焼成時に煙で燻し、銀灰色の独特の光沢を持つ。伝統的な寺院・和風住宅に使われる。耐久性が高く、年月とともに深みを増す。

  • 陶器瓦
     釉薬を施して焼き上げるため、色彩が豊富。耐候性にも優れる。現代住宅にも多く用いられる。

  • 平板瓦
     フラットな形状でモダンな印象を与える。耐風・耐震性能が高く、都市部の住宅でも増加傾向。

  • セメント瓦
     経済性に優れるが、経年劣化が早く、定期的な塗装メンテナンスが必要。

瓦は地域の風土と文化に密接に関わる。例えば、雪国では雪滑りを重視し、南九州では日射反射性や通気性が重視される。
つまり瓦とは、気候と文化が形を変えた素材なのである。


3. 工事の基本工程

瓦屋根工事は、次のような流れで行われる。

  1. 既存屋根の撤去
     古い瓦やルーフィング、桟木を取り除き、野地板の状態を確認。腐食部分は補修または交換する。

  2. 下地施工
     防水シートを貼り重ねる。重ね幅や釘の間隔は規定に従い、雨水の逆流を防ぐ。

  3. 桟木打ち
     屋根勾配に合わせて桟木を均一に設置。水平・通りを確認しながら施工。

  4. 瓦葺き
     一枚ずつ丁寧に置き、釘や銅線で固定。勾配・通り・割付を確認し、全体のラインを美しく仕上げる。

  5. 棟・ケラバ・袖の納まり
     屋根の端部や頂部を「納める」作業。防風・防水の要であり、職人の経験が最も問われる部分。

  6. 清掃・検査
     浮きやズレ、釘の緩みを確認。屋根全体の美観を整えて完工。

これらの工程を一つでも省略すれば、後々の雨漏りや破損の原因となる。
「瓦屋根の寿命は、施工精度で決まる」と言われる所以である。


4. 瓦の美と機能

瓦屋根は機能美の極みである。
重なり合う曲線が生み出す陰影は、光の角度によって表情を変える。
その一方で、通気・排水の役割を果たし、内部の湿気を逃がす。

屋根の勾配、瓦の曲率、重ね寸法。
そのすべてが合理的に設計されており、無駄がない。
職人たちは「美しい屋根ほど雨漏りしない」と言うが、それは真実である。


5. まとめ

瓦屋根は、単なる建築部材ではなく「日本の風景の一部」である。
風雨や日差し、そして時代の変化に耐えながら、静かに家を守り続ける。
その屋根を支えるのが、瓦職人の技と誇りである。